【報告】當作靖彦先生 名古屋大学教育学部附属高等学校・名古屋大学言語教育センターでの講演会
2025.04.23
カリフォルニア大学サンディエゴ校名誉教授の當作靖彦先生による講演が、2025年2月10日に名古屋大学教育学部附属高等学校および、名古屋大学言語教育センターのキックオフシンポジウムにて行われました。
報告:かめのり財団
名古屋大学教育学部附属高等学校 講演会「21世紀を生きる地球市民になるために」
20世紀から21世紀へと移行し四半世紀が経ちました。私たちは今、時代の変革期にいます。この変化の中をどのように生き抜いていくか、高校1年の全生徒に向けて當作先生は語りかけます。
多様性からイノベーションは生まれる
努力をすれば報われた前世紀と違い、21世紀は未来を予測することが一段と困難な時代です。従来の解決方法では対応できない新たな課題が増加したため、「イノベーションを創出する力」が求められています。それも一部の特別な人だけでなく、教育によって誰もがその力を育むべきだというのです。當作先生は、多様な人々と協働することからイノベーションは生まれると考えます。
21世紀のキーワードは「つながること」です。国籍や文化、価値観の違いを超えて協力し、共に新しいものを生み出す力が求められているのです。共感力や協働力、共創力、そして越境力を養い、自分と異なる視点を持った人たちと積極的に関わることが、新しい発想を生む原動力になると、當作先生は強調します。
AIの登場と人間の価値
2022年に登場した生成AIにより、今まさに社会の様相が大きく変わりつつあります。AIは瞬時に膨大なデータを処理できますが、倫理観や感情はありません。AIにできない能力を磨くことが人間の価値につながり、それが21世紀の社会を発展させるのだと訴えました。
リスクを恐れず世界とつながる
激動の時代は続きます。混迷と変化の社会を生き抜くには、人生において4、5回自己変革をする必要があると予測します。最後に當作先生は、「自分の後悔はリスクを冒さなかったこと」と自身の人生を振返りながら、リスクや変化を恐れず踏み出すことで、自ら新しい価値を生み、世界とつながりながら成長していってほしい、という力強いメッセージを贈りました。これから長い未来を歩む高校生たちにとって、當作先生の言葉が人生の道しるべとして生き続けることを願っています。
名古屋大学言語教育センターキックオフシンポジウム「未来にはばたけ!ことばの教育」 特別講演「未来戦略としての外国語教育」
同日の午後には、名古屋大学言語教育センターキックオフシンポジウムの基調講演として、言語教育を専門とする教員や大学生へ向けた當作先生の講演が行われました。
変化する時代の中の言語教育
高校での講演に続き、現代は未来の予測が不可能な「破壊的イノベーションの時代」であるという前提から講演は始まりました。テクノロジーが政治や社会を主導し、情報過多や偽情報の拡散による混乱が進む今世紀は、平均的な能力を持つ多数の人々には生きにくい時代となりました。
そのような時代において「言語教育の目的」を再検討するならば、言葉を使えるようにするという「機能的目的」よりも、人間力や社会力を育むという「教育的目的」が重要であると、當作先生は言います。未来における言語教育は、単なるツールとしての言語習得から、人間教育としての役割へと進化が期待されています。
外国語を学ぶことでつながること
とくに「つながる力」は言語教育の柱です。外国語を学び多様な文化や人々とつながることが、人間の知識や能力のネットワークを育てます。さらに生成AI時代を迎えた今、AIにはない人間固有の創造力や共感力の重要性が増しています。
當作先生は、未来志向の言語教育とは、人間としての成長を促し、多様な人間が互いに助け合いながらよりよい社会を築く力を育むものだとして、講演を締めくくりました。この日當作先生が示唆した道が、言語教育を志す学生や実践する先生方の、新たな指針となることを期待しています。
実施概要
名古屋大学教育学部附属高等学校 講演会 講演タイトル「21世紀を生きる地球市民になるために」 開催日 2025年2月10日(月)午前 場 所 名古屋大学教育学部附属高等学校 参加者 高校1年生120名、および教員 | ![]() |
名古屋大学言語教育センターキックオフシンポジウム「未来にはばたけ!ことばの教育」
名古屋大学言語教育センターウェブサイト:https://lec.nagoya-u.ac.jp/ |