【報告】特別講演会「日本語教育の未来を切り拓く」マニラにて実施

 かめのり財団は、国際交流基金マニラ日本文化センター(JFマニラ)とフィリピン日本商工会議所(JCCIPI)の主催する日本語教育特別講演会「日本語教育の未来を切り拓く」に、カリフォルニア大学サンディエゴ校の當作靖彦先生を米国より招聘しました。講演会は2024年3月12日にマニラにて実施されました。

 


報告:国際交流基金マニラ日本文化センター

藤光由子(日本語上級専門家)

 

 當作先生をお迎えした日本語教育アドボカシー事業、招待制の特別講演会「日本語教育の未来を切り拓く:Leading the Way to the Future of Japanese Language Education in the Philippines」は、マニラのビジネスの中心であるマカティ市内の瀟洒なホテルのグラスハウスで行われました。ご参集いただいたのは、このテーマに関心を寄せる日比の産官学民の日本語教育ステークホルダーの方々です。ビジネスコミュニティからはグローバル企業の人事担当者や人材紹介コンサルタントなど、フィリピン政府機関からは、技術教育技能開発庁、移民労働局、教育省、日本政府関係では、日本大使館、JICA、JETROの関係者など、高等教育機関はフィリピン大学を含む拠点大学6校、そのほか大手日本語学校関係者、国内各地の教師会代表者、地元邦人紙の記者、JFマニラの日比の同僚たちも合わせますと70名を超え、会場は満席となりました。ここに日比の産官学民の日本語教育関係者が一堂に会して、日本語教育の未来について認識を高め、それぞれの役割を省察する場が実現したのです。フランチェスカ・ヴェントゥーラ日本語教育アドバイザーが、自然体の落ち着いた司会ぶりで、会場を和ませつつ進行しました。

 

 

 ご講演は、曇りなきヴィジョンを示し、深い洞察と最前線の教育的知見をもとに、フィリピンの日本語教育界の課題の本質を指摘するものでした。〈よい人財を生み出すには、これまでの言語知識テスト偏重をやめること。地球市民を育てるという大きなヴィジョンを共有するこが必要。教育の質は教師の質であり、教師教育に注力する必要がある。〉ディスカッサントのアレクサンダー・マカイナグ氏(ビサヤ日本語教師会)、ロベルト・フィゲロア氏(フィリピン大学オープンユニバーシティ)のお話も、「教師教育」の重要性という認識、そのためのコラボレーションのご提案が含まれていて、ご講演に深く響き合うものでしたし、質疑応答セッションも活発で、時間が足りないほどでした。最後は、ファラ・クナナン氏(フィリピン大学ディリマン校言語学科)が、アカデミアの教育者としての内省の言葉とともに、示唆に富む形で会全体の議論を総括してくださいました。本講演は、日比の産官学民の日本語教育関係者に「日本語教育の未来を切り拓く」ためのヴィジョンを共有し、キー概念を言語化し思考を進める糧として提供すると同時に、フィリピンのキーパーソンに、彼ら自身の深い省察とコミットメントを引き出していたという点で、実に画期的だったと思います。

 

 


 

実施概要

演題: 日本語教育特別講演会「日本語教育の未来を切り拓く」
講演者: 當作靖彦先生(カリフォルニア大学サンディエゴ校教授、日本語教育学会理事)
日時: 2024年3 月12日(火)
会場: New World Makati Hotel、マニラ

対象: 社内で日本語教育を実施している企業、OJT等で日本にフィリピン社員を派遣されている企業、フィリピンにおける日本語教育の将来に興味のある企業、日本語教育に係るフィリピン政府機関や教育機関の関係者

主催: 国際交流基金マニラ日本文化センター、フィリピン日本商工会議所(JCCIPI)
協力団体: かめのり財団
後援団体: 在フィリピン日本国大使館