奨学生 8月の月次レポートを掲載しました

 かめのり財団が支援する大学院留学アジア奨学生は、毎月月次レポートを作成し、月ごとの研究の進捗状況や日々の様子を報告しています。HPでは毎月、2名のレポートをご紹介します。

 


 

かめのり大学院留学アジア奨学生

月次報告レポート(2024年8月)

 

                    

お茶の水女子大学大学院比較社会文化学専攻

博士二年 曹 怡(ソウ イ)

 

 今月は研究と生活のバランスを取れたため、有意義に過ごせた。投稿する論文はまだ訂正中であり、前後の論述や歌の説明など、重ねて修正を入れている。年末の発表に向けて、用例を収集している段階である。和歌・連歌・聯句・漢詩文など様々な面で集まった用例については、ある程度相互的な受容関係が示されているが、結論にまだ至っていない。一体何を証明できるか、当時の人々の交流を通して広まった様子に関し、より確定的な文献資料を見つけたい。

 

 上旬は上海に帰省し、家族との時間を楽しんだ。また、学生時代の友達と遊んだりし、北外灘で散策もした。上海の夜景で一番有名な外灘は広く知られているが、近年北外灘は観光スポットとして人気がアップしている。浦西側の川沿いのエキゾチックな建物も、浦東側の東方明珠や高層ビルも一枚の写真に収められるベストスポットである。下の写真は今回北外灘で撮った景色である。また、色んな地域の火鍋を味見した。飲食業界の競争がますます激しくなり、半年ぶりに帰って、ブームになった料理や飲み物、人気のレストランが移り変わった。

 

 なお、連日上海図書館で勉強した。今年出版された新書を存分に読んだ。『宋元山水画の変―環境生態から見る中国芸術史』という一冊は、各地域の環境生態の特徴から入手し、それが山水画、ないし芸術鑑賞にどのような影響を与えたかを考察した。ずっと昔から自分の体験や感覚で思った疑問は、この本を通して考えをより一層明白になり、これからの研究にも繋がると思う。

 

 更に、興味のある「宋元明移行期論」関連の先行研究を調べた。宋代の歴史文化と明清時代の歴史文化を分けて考えるのが主流だが、それらを繋げる南宋中後期・元時代は、実は制度・文学など様々な面で中国に莫大の影響を与え、軽視できない重要な時期である。中国の知識人の地位の変化から、心境、または彼らの文学・絵画創作にも変化が見える。日本と交流した中、当時の五山文学・和文学にも前代と違った特徴が残されているのではないかと思っている。研究に対して、色んな新しい視点が獲得できた。

 

筆者撮影

 

 また、新宿にある世界堂というお店で水墨画の授業を体験した。普段研究にたくさんの水墨画を引用考察したが、描くのは初めてであった。歳寒の三友の一つの竹を書いてみた。筆のコントロールや墨の濃淡の調節は、思った以上に難しかった。水墨画は墨一色なため、墨の濃淡を駆使し、空間の奥深さを表現するものである。竹の葉っぱの形、または、濃淡で奥行きを示すつもりだが、葉っぱの配置も難関であった。何回も練習し、それでもうまく描けなかった。竹は一番簡単な入門素材なので、最後まで竹として一応描いたが…竹は寒中にも色褪せないため、古くから「清廉潔白・節操」という、文人の理想を表現したものと認識された。形を模倣するまで精一杯で、大家のように風骨まで表現できることに感心した。

 

 その他、9月の夏の研修交流会の発表に向けてPPTなどの準備をしている。研究テーマは去年と同じであるため、紹介する内容がほぼ変わらないが、より簡潔で分かりやすい説明できるため、色々と考えているところである。それもこの一年間の勉強と蓄積を、よく体現できると思う。またみんなとの交流の場ができ、様々な領域の研究発表を楽しんでいる。富山は初めてなため、北陸の自然と文化を満喫したい。

 

2024年8月27日

 

 

 

 


 

かめのり大学院留学アジア奨学生

月次報告レポート(2024年8月)

 

 

 

名古屋大学大学院経済学研究科社会経済システム専攻

博士前期課程(M2) 侯 心琦 (ほうしんち)

 

 

 今月は久しぶりに台湾に帰国し、高雄の実家でゆっくり過ごしました。高雄は近年公共施設に力を入れており、帰省するたびに高雄の変化に実感します。

 

 例えば、昔の高雄に地下鉄の路線が2つしかなく、全くなかった時と比べると便利にはなったものの、やはり地下鉄では行きにくいところがたくさんあり、結局高雄の人たちは使い慣れたバイクを利用しなければなりませんでした。地下鉄の使用率が低いと、運営会社も黒字化できにくく、夏でも駅内の冷房を弱く設定し、人々の使用意欲がさらに下がったという負のスパイラルに陥いました。また、大量のバイクや自家用車による空気汚染が酷く、歩行者のための歩道が狭い、あるいは設置されていない道も多いため、高雄に限った話ではないが、台湾は台湾人にも「歩行者地獄」と自嘲されています。私はバイクの免許が持っていないため、公共交通機関に頼るしかないけれど、高雄のバスは稀にしか定刻に来ず、高雄の公共交通機関は全体的に利用しにくいと思っていました。幸い、昔から自転車のシェアリングサービスが発達しており、既存の公共交通機関の不足を補う役割を担っていました。しかし、何年か前から建設していたライトレールが最近ようやく完成し、高雄の観光スポットを中心に高雄市内を一周できるようになりました。観光客を呼び込む効果だけでなく、高雄人にとって、地下鉄がカバーできていない部分をライトレールがある程度補足できたと思います。

 

 今回はライトレールに乗って一周してみて、高雄の港風景は本当に美しいと改めて思いました。そして、今度は実家の近くに通る新しい地下鉄の路線をこれから建設すると聞き、地元民にとってはもう最高のニュースにしかありません。さらに、シェアリングサービスも進化しており、私は車の免許があるため、今回はシェアカーを利用してお墓参りと隣の県に旅行してきました。実際に利用する前に、シェアカーに車内が汚いイメージを持っていたが、全然そんなことなく快適に利用できました。高雄の交通問題の解消は一朝一夕にはいかない課題だが、地下鉄ネットワークの充実化につれて、より住みやすく魅力的な街になると期待しています。

 

 ところで、今回の帰省は実家と亡くなった祖父母の家をたくさん片づけました。心を鬼にして、大量の不用品や賞味期限切れの食料品を処分しました。断捨離は心の整理、と最近思えてきて、自分の持ち物を把握・整理整頓することによって、人生のハンドルを握ると悟りました。自分の持ち物を把握できていないと、まだあるのに物を買ってしまい、金銭の浪費に加えて、家のスペースも取られて余裕のない生活を送らざるを得ないから、これから慎重に買い物するようにしたいと思います。