【報告】にほんご人フォーラム2024(日本)

にほんご人フォーラム2024 ~5年振りに開催~

 

 独立行政法人国際交流基金(JF)との共催で、2024年8月18日~25日に、2019年度以来5年振りとなる集合フォーラム「にほんご人フォーラム2024(JSF2024)」を、国際交流基金日本語国際センター(さいたま市)にて開催しました。

 

 マレーシアの参加者が台風の影響により、8月20日午前に来日することになりましたが、先に到着していた参加者に温かく迎え入れられ、積極的に交流する姿が見られました。教師プログラムでは、教師たちは育てたい能力や、やってみたい活動などを授業に取り入れるために、国ごとで考えた授業計画や工夫を発表し、多角的な視点を持つことを学びました。生徒プログラムでは、「わたしのまちはサスティナブル?」というテーマで学び、最終日にはグループでサスティナブルについての3分動画を作成し発表しました。また海外からの参加生徒は、8月24日~25日に埼玉県内の家庭でのホームステイを行い、日本の家庭生活も体験しました。

 

 各プログラムの日本語教育専門員と講師による報告レポートをお届けします。

 


 

【 教師プログラム 】

体験・観察・対話を重ね、自身の実践をふり返り、考えを深める

報告:国際交流基金日本語国際センター

日本語教育専門員 山本実佳

 

 今回の集合フォーラムでの最終課題は、自分の国で実践できる、これからの社会を生きる世代に求められる能力を育てるための日本語の授業/活動案をみんなで考えることでした。そのために、訪日前には、事前課題や事前オンラインセッションにおいて、21世紀型スキルについて書かれた文章や、自分の国のカリキュラムを読み、国の教育の中で大切にされていると思うことを探し、日本語教育で育てていかなければならない能力を考えたり、これまでの自分の授業をふり返ったりしました。

 日本での集合フォーラムでは、事前オンラインセッションの内容をふり返り、生徒プログラムを体験したり、観察したりしました。体験を通して、まず、生徒が何を考え、感じているのかについて考え、次に、活動をすることで何ができるようになったのか、その活動でどんな能力が必要だったのかを考えました。観察では、活動の流れとともに、教師の指示や問いかけの方法をはじめ、最終的には観察するポイントを自分で決めました。

 

 

 このように複数の視点で見てきた活動について、考えたことや気づいたことなどを何度もディスカッションしたり、ふり返ったりして、参加者同士が協働で考えを深めていきました。また、生徒プログラム講師との相談セッションでは、体験や観察での疑問を直接質問することができたことで、さらに理解を深めることができました。そして、これらフォーラムで深めた学びを踏まえ、自分たちの今までの授業や活動をふり返りながら、自分の国でできる授業/活動案を国ごとのグループで協力しながら考えました。

 

 グループで考えた案は、他のグループに中間報告をし、コメントやアドバイスをもらい、それを受けてさらに考え修正し、最終発表を行いました。どの授業/活動案も、自分の国の教育が大切にしていることを考えながら、自分たちが日本語の授業で育てたい能力を育てるための工夫が見られるものでした。そこからは、フォーラムを通じて、日本語の能力だけではなく、これからの社会を生きる世代に求められる能力は何か、そしてその能力を育てるためには何をすべきか、深く考えるようになっていることが見て取れました。発表の際には、聴衆の方々から様々な質問やコメントをいただき、それを踏まえて帰国後に実践する際にさらに考えなければならない点についても話し合いました。フォーラムの最後には帰国後のアクションプランを一人ひとりが宣言し、それぞれがフォーラムでの新たな気づきと強い決意を持っての帰国となりました。

 

 

 教師の仕事がそうであるように、教師プログラムはこれで終わりではありません。事後課題は、集合フォーラムで考えた授業/活動案を国で実践することです。次回、事後オンラインセッションでその様子を報告してもらうことになっています。このフォーラムで考えた授業/活動案を実践し、さらによりよい授業/活動となるよう、事後オンラインセッションでみなさんとまた熱いディスカッションができたらと考えています。

 

 

 


 

【 生徒プログラム 】

知る、深める、体験する、まとめる、そして伝える

 

報告:生徒プログラム講師 新谷知佳  

 

 生徒プログラムは、オンラインセッションで顔合わせを行った後、「わたしのまちはサスティナブル?」というテーマのもとに、生徒自身が暮らすまちのいいところとよくないところを調べる事前課題から始まりました。メインプログラムでは、日本、インドネシア、タイ、マレーシア、フィリピン、ベトナムの生徒各1名からなる多国籍グループに分かれ、自分のまちを紹介し、よくないところをカテゴライズしました。東京の有明・浅草のフィールドワークにもでかけ、サスティナブルへの理解を深めるとともに、24名全員で同じ経験を共有しました。そして、サスティナブルについてグループの考えをまとめ、自国の友達に学んだことを伝える3分の動画を日本語で作成し、発表しました。

 

 

 生徒は慣れない日本語でコミュニケーションをとり、紙に図を描いたり言いたいことをテキストにして見せたりと試行錯誤し、時には英語も使いながら、サスティナブルという抽象的なテーマに取り組みました。毎日の振り返りの活動では、グループの中の役割分担や自分の貢献に悩んだり、タイムマネジメントに苦労したりしている様子がうかがえました。中間発表の時点では、どのグループも動画のアイディアまでしかできていませんでしたが、最終日には、ドラマ・ニュース・Vログなど様々なスタイルで、グループごとに個性豊かな動画を完成させました。動画の内容だけではなく、発表の方法にもメッセージを伝える工夫がなされ、生徒たちの創造力やチームワーク、ICTスキルが存分に発揮されたといえるでしょう。また、テーマに関する活動の他に、文化紹介や自由時間、食事の時間を通して、生徒たちはお互いの文化に触れることができました。好きな歌手の歌をみんなで歌ったり、お互いの国の伝統的な踊りや流行のダンスを一緒に楽しんだりしました。フィールドワークの食事は、友達の宗教的な理由による食事制限を知る機会にもなったようです。様々な活動を通して、相互理解を深め、友情を育みました。

 

 

 最終日の懇親会では、帰国後のアクションプランをひとりひとりが日本語で発表しました。堂々と自分の挑戦を述べる姿からは、活動の中でそれぞれが何か手ごたえを掴み、自信を得たことが伝わってきました。帰国後、それぞれが実際の行動につなげることで、その自信をより深めていってもらいたいと願っています。

 

 


 

プログラム概要

 

1.主催:独立行政法人国際交流基金、公益財団法人かめのり財団

 

2.実施期間:

      オンラインセッション:生徒プログラム 2024年7月20日(土)

               教師プログラム 2024年7月20日(土)、8月10日(土) 各2時間

 

        メインプログラム:2024年8月18日(日)から8月25日(日) 

 

3.会場: 国際交流基金日本語国際センター(埼玉県さいたま市)

 

4.参加者:東南アジア5ヵ国(インドネシア、タイ、フィリピン、ベトナム、マレーシア)から生徒各4名、

      中等教育日本語教師各2名、引率者各1名、日本の高校生4名 合計39名

 

5.プログラムの目的:

     ①東南アジアと日本の若い世代が、相互理解における言葉の大切さ、ことばを学ぶことで得られる

         将来の可能性の広がり、 国や文化が異なる人と協力することの楽しさや難しさを知る。

     ②自身のアイデンティティを認識するとともに、多様な人、文化、社会とつながりを形成しながら

        自ら行動できる力を伸ばす。