奨学生 10月の月次レポートを掲載しました

 かめのり財団が支援する大学院留学アジア奨学生は、毎月月次レポートを作成し、月ごとの研究の進捗状況や日々の様子を報告しています。HPでは毎月、2名のレポートをご紹介します。

 


 

かめのり大学院留学アジア奨学生

月次報告レポート(2024年10月)

 

                    

筑波大学大学院人間総合科学学術院教育学学位プログラム

博士後期課程(D1)

甄 卓榮 (ケン タクエイ)

 

1. 研究について

 

 今月は、高校での授業見学を中心に研究を進めています。現在、予備調査として、都内のある進学校と地元の県立高校でフィールドワークを行い、主に「公共」の授業を見学しながら、生徒と関わりつつ彼らの学習の様子を観察しました。特に、学校やクラスごとに大きく異なる雰囲気に驚かされ、教育現場の具体的な多様性に魅力を感じています。学力差があるにもかかわらず、両校の「公共」授業では「安楽死」「政府の役割」「差別」「自由主義」など幅広いテーマが取り上げられ、現実的で具体的な事例を交えた学びが展開されている点が印象的でした。先生たちは政治や経済の話題に加え、倫理や政治哲学もできるだけ具体例と結びつけて展開しようと工夫しており、授業には先生ごとの個性も反映されていて、多くの授業が魅力的で興味深いものでした。

 

 今月中に見学した数十コマの授業を比較しながら、2つの問題について考えてきました。まず、生徒の科目や授業への見方についてです。同じ授業を受けている生徒でも、授業に対する態度や姿勢が大きく異なることが観察されました。丁寧にメモを取る生徒もいれば、ほとんど先生に目を向けず、内職をしている生徒も多く見られました。後者を単に逸脱行為と見なすのではなく、この授業や科目が生徒にとってどのような存在であるのか、生徒の視点から問い直すべきだと思います。同じ「サボる」行為であっても、その背景には異なる理由があることが観察を通してわかりました。

 

 次に、学習の「深さ」についてです。学習指導要領では「主体的・対話的で深い学び」が推奨されていますが、対話的であっても深まらない授業や、あまり主体的とは言えないが深みのある授業も多く見受けられました。では、深い学びをいかに実現できるのでしょうか。知識はもちろん重要な基盤ですが、先生の適切な誘導や関与によって生徒の批判的な思考を引き出すことが不可欠であると考えています。今後も、この批判的な思考が社会科においてどれほど実現されているのか、またどのように実現できるかについて研究を進めていきたいと思います。

 

 現在、具体的な研究方法を検討しながら予備調査を進めており、来年4月からの本調査に向けて研究の枠組みを構築していきます。そのため、研究の基盤となる概念や理論、先行研究や調査報告を丁寧に振り返り整理しています。また、研究方法に関する大学院生向けのゼミに参加したり、現場の教員と意見交換をしたりしながら、研究の方向性を模索しています。

 

2.生活について

 

 今月も多くのサークル活動に参加し、特にバレーボールとアルティメットの練習に励んでいます。「上手くなるほど楽しめる」というのは、すべての学習に共通していると思いますが、スポーツはその実感を特に得やすいのではないでしょうか。また、スポーツサークルは練習だけでなく、さまざまな活動や行事を通じて人とつながり、成長する楽しい場でもあります。今月は、荒川の河川敷で東京大学のチームとアルティメットの練習試合をしました。競技を楽しみながらも、東京に車で行くことはオススメできないということも身をもって理解しました。月末には、サークルのハロウィーン仮装イベントにも参加し、友人たちの完成度の高いコスプレに圧倒されました。

 

 

 

「同じ授業を受けている生徒でも、授業に対する態度や姿勢が大きく異なる」(2024年10月、筆者スケッチ)

 

「教育現場の具体的な多様性」(2024年10月、筆者スケッチ)

 

 


 

かめのり大学院留学アジア奨学生

月次報告レポート(2024年10月)

 

 

 

立教大学大学院社会学研究科社会学専攻

博士後期課程(D2)

具 弦俊 (グ ヒョンジュン)

 

1.研究について

 

 約半年にわたる研究と執筆を通じて、投稿論文がついに仕上げの段階に至った。研究の初期段階ではデータ収集や仮説設定、文献レビューなどの基礎作業に多くの時間を費やし、これにより研究の方向性をより明確にすることができた。しかし、実際の分析過程では想定できなかった変数間の関連や結果が現れ、仮説を修正したり、分析方法を再検討したりする必要が生じ、こうしたプロセスを繰り返しながら論文を再検討する状況が頻繁に発生した。その結果、当初予定していた期日よりもかなり遅れた。特に、データ分析過程では予想とは異なる結果が示され、何度も仮説を修正し、分析モデルを再検討するために多くの時間がかかった。しかし、こうした修正過程を通じて分析モデルの妥当性と分析結果の信頼性を高め、論文の完成度を一層向上させることができたと考えている。

 

 また、論文執筆中に指導教員の先生から頂いたフィードバックは、研究をより明確にし、論文の論理構造を高める上で重要な役割を果たした。先生のコメントに基づいて、論文の各部分の構成や論旨を練り直す過程では、大幅な修正や加筆が必要となったが、結果的に論文の質を向上させる上で大いに役立った。特に、結果の解釈においてより説得力のある論理を組み立てるためには、指導教員の先生のコメントが不可欠であると改めて感じた。

 

 今後、11月に予定されている先生との相談において、最終検討を経た後に論文を投稿する予定である。本論文は、研究者としての初執筆であるだけでなく、長い時間をかけて行った研究と努力の賜物であるため、より一層の意味があると思っている。最終投稿までに少しでも完成度を高めるため、引き続き努力を惜しまないつもりであり、本研究が学問的な貢献につながるよう尽力していきたいと考えている。

 

2.生活について

 

 最近の日常は研究と執筆が中心だが、研究と休みのバランスを取り戻すために努めている。できるだけ毎日決まった時間に起床し、研究室に向かっている。最近は日較差が大きく、研究室へ行く時は暖かいが、帰宅時には寒さを感じる日が多い。また、学園祭が近づいているため、多くの学生がその準備で忙しくしている様子を見ることが多いが、毎年のように自分とはあまり関係がないため、裏門を回って登校している。それでも週末は1日、自宅で休みを取っているが、来週からは少しでも時間を確保するために、こうした休息日も削って研究室に行った方が良いのではないかと悩んでいる。また、論文執筆中に読みたかった本が溜まってきたため、11月から少しずつそれらの本も読んでいこうと考えている。