奨学生 2月の月次レポートを掲載しました

 かめのり財団が支援する大学院留学アジア奨学生は、毎月月次レポートを作成し、月ごとの研究の進捗状況や日々の様子を報告しています。HPでは毎月、2名のレポートをご紹介します。

 


 

かめのり大学院留学アジア奨学生

月次報告レポート(2025年2月)

 

                    

横浜国立大学大学院環境情報学府自然環境専攻

博士前期課程(M2)

CHEN ZIYAN(チェン ジアン)

 

一.   研究生活

 

 今月の最も大きな成果は、修士論文の発表を無事に終えたことである。1月末にようやく論文の修正が完了し、2月に入ってからは12分間の発表に向けた練習を重ね、スムーズに話せるよう準備を進めた。そして、2月6日に発表を無事終えることができた。発表後は一時的に休息を取ったが、2月中旬からは博士後期課程の研究計画の策定や、学会発表の準備を本格的に進めている。

 

 修士課程では、里山林床における人間の管理活動(草刈り)が節足動物の個体数および多様性に与える影響を研究した。しかし、当初予定していた微生物群集や分解機能に関する分析には十分に取り組めなかったため、博士後期課程ではこれらの研究をさらに発展させていきたいと考えている。特に、近いうちに微生物のDNA抽出作業を行い、今年中に草刈り管理が微生物群集に与える影響を明らかにすることを目標としている。

 

 修士研究の結果からは、草刈りの初期段階では、植物(共同研究者が担当)や節足動物群集に大きな変化が見られなかった。これを踏まえると、管理活動が生態系に与える影響を明らかにするためには、中長期的な調査が不可欠であり、今後も継続的に草刈りを実施しながら、2~3年後の変化を追跡する必要があると考えられる。

 

 また、森林の分解機能に着目して解析を進める理由は、物質循環に深く関わる重要な要素だからである。特に、先行研究では、管理活動の放棄によって従来の栄養収奪がなくなり、栄養素が回復することが示されている。しかし、再び管理活動を加えた場合、どのようなメカニズムで栄養素が減少するのか、またその速度はどれほどかといった点は未解明である。したがって、今後の研究では、分解者群集の変化や分解速度の分析に加えて、栄養素動態にも着目し、管理活動が森林の物質循環に及ぼす影響を包括的に明らかにしていきたい。

 

二.   日常生活

 

 今月、とても恥ずかしくて、しばらく忘れられそうにない出来事があった。それは、誤って別のメーリングリストにメールを送ってしまったことだ。

 

 私の研究室では、毎月、自身の月間目標を研究室のメーリングリストに送る必要がある。しかし、大学内には、所属研究室のメーリングリストのほかに、合同ゼミ用のメーリングリストや、生態系関連のすべての研究室が参加するメーリングリストも存在する。修論発表前日、ちょうど時間が空いたので月間目標を送信しようとしたところ、誤って 生態系関連の全研究室のメーリングリストを宛先にしてしまった。その結果、翌日の発表を審査してくださる先生方だけでなく、他の研究室の学生たちにまで通知が届いてしまい、非常に気まずい思いをした。

 

 以前、OBOG との連絡手段について議論した際、私自身もメーリングリストの活用を提案したが、このようなミスを防ぐためにも、やはり Slack や ホームページ上での管理の方が適しているのではないかと改めて感じた。

 

 


 

 

かめのり大学院留学アジア奨学生

月次報告レポート(2025年2月)

 

 

筑波大学大学院人間総合科学学術院教育学学位プログラム

博士後期課程(D1)

甄 卓榮 (ケン タクエイ)

 

1.研究について

 

 2月1日に日本に戻り、生活を立て直し始めました。6日の総合指導発表に向けて、12月から考案してきた高校生の「国家意識」を中心としたアンケート調査について、その理論的基盤の検討や具体的な質問項目の作成に専念しました。先行研究を振り返りながら、従来の「政治意識」系調査の着眼点やその学問的文脈をある程度把握しました。特に、「政治」の領域化や、社会科教育における「政治」と「法」の分離が生じた要因を探りました。そして、「政治」概念の狭窄化を検討した上で、今後のアンケート調査の中核となる「国家意識モデル」を作成しました。このモデルの要点は、「態度」を測ることよりも、若者の「事実認識 → 価値判断・自己形成」という「思想」の構造を明らかにすることを目標とする点にあります。

 

 また、発達段階の順序性を重視するアメリカ発祥の政治社会化研究とは異なり、私の研究では、高校生を、情報や言説を咀嚼し、自らの思想を修正し続ける主体として捉えています。このように思想構造の解明を目的とするアンケート調査は非常に珍しく、質問項目を作成する際に参考となる先行研究が限られています。そこで、質問の文面を調整しつつ、回答しやすさや統計上の利便性に配慮しながら、一部の質問紙を作成しました。これまで量的研究の経験がほとんどなかったため、不安もありましたが、幸いにも総合指導では先生方から研究の方向性が概ね認められました。今後は、3月中旬のゼミでアンケート調査をさらに検討し、月末に倫理審査を提出する予定です。

 

 また、2月中旬から高校での授業見学を再開しました。2月は今年度最後の授業期間であるため、できるだけ頻繫に学校を訪問しました。現場の状況をより詳しく知ることは、アンケート調査の設計にも非常に重要だと考えています。例えば、1学年に4~6クラスある場合、コースや生徒の構成が異なるのは当然であり、それを念頭に置きながら質問を作成する必要があります。もちろん、データを解釈する際にも、こうした現場の情報は極めて重要です。さらに、カリキュラムの全体像を把握することや、生徒たちの科目に対する態度をある程度理解することも、アンケート調査の設計において不可欠です。約1か月ぶりの授業見学では、生徒たちが笑顔で手を振りながら挨拶してくれました。その温かさに喜びを感じました。

 

2.生活について

 

 去年と同じく、春休みを利用してサークルの友達と雪合宿に行きました。今回はかなり大人数だったため、バスを貸し切り、群馬の草津へ1泊2日の旅行をしました。改めて、日本の観光産業の蓄積に感銘を受けました。ホテルの設備やスキー場の整備、交通機関の運営が非常に成熟しており、若者にとっても魅力的です。特に「雪マジ」などの特典によって、スキー・スノーボードがより手軽に楽しめるようになりました。世代間の格差が小さくなることは、観光産業の持続可能性を保証する要素の一つだと考えられます。私は「雪マジ」を利用できませんでしたが、2日間本気でスノーボードを練習し、少し上達したように感じました。また、ホテルでは初めて雪の中で温泉を楽しみ、そのロマンティックな雰囲気を満喫しました。