かめのりフォーラム2025開催レポート

2025年1月10日(金)、「かめのりフォーラム2025」をアルカディア市ヶ谷で開催しました。今回のフォーラムには、2024年度のプログラムに参加した高校生から大学院生をはじめ、弊財団にご協力くださる方々など、125名 が参加しました。

 

 


執筆:近藤圭子

 

第1部 かめのりフォーラム2025

主催者挨拶・来賓挨拶

 

 

 初めに主催者挨拶として、昨年10月に理事長に就任した宮嶋泰子より、皆様にご挨拶申し上げました。宮嶋は、かめのり財団の根底に流れる「社会から与えられたものを社会に還元せよ」との考え方を、自身のこれまでの歩みと重ね合わせて紹介しました。宮嶋は、スポーツ報道に携わったアナウンサー時代に、ある方との印象的な出会いを通じて、「自分の持てる力は多くの方の支えで得られたものであり、それを社会のために使わなければならない」と考えるようになりました。以来、パラリンピックの番組作りやスポーツイベントを通じた国際交流を実現させてきたことを振り返り、「若い皆さんには、ぜひご自身の力を蓄えて、それを社会に還元していけるように頑張ってほしい」とエールを送りました。同時に、皆様からの日頃のご支援に感謝申し上げました。

 

 

 続いて、独立行政法人国際交流基金 上級審議役 大谷圭介様よりご祝辞をいただきました。大谷様は、国際交流基金様と弊財団が共催する「にほんご人フォーラム」がコロナ禍を経て5年ぶりに開催されたことに触れ、日本語を共通語としてアジアの若者が交流し、これからの社会を担う人々のネットワークが生まれているとご紹介くださりました。また、かめのり賞について、「民間のユニークな取り組みが表彰され、ありがたく思う」とお話しいただきました。

 

第18回かめのり賞表彰式、受賞者による活動紹介

 

 かめのり賞表彰式は、かめのり財団創設者で評議員の康本健守と、かめのり賞選考委員の髙野孝子がプレゼンターを務めました。受賞した3団体には、記念のトロフィーと副賞の活動奨励金が贈呈されました。

 

かめのり大賞 草の根部門 特定非営利活動法人アレッセ高岡

 アレッセ高岡様は、外国人散在地域である富山県高岡市で、外国につながる子どもや若者を中心に市民性教育を行っています。富山県民を対象に行った学びのニーズ調査は行政を動かし、県レベルでの変革の動きが始まっています。

 

理事長 青木由香様

 「以前は外国につながる子どもたちへの学習支援を行っていましたが、現在は地域のすべての人を対象とした市民性教育を行っています。これにより外国につながる子ども・若者の存在と無限の可能性を地域の人々にアピールし、この課題が地域の課題であることを多くの人と共有してきました。今、地域の未来を切り開く若い人材が育っていると感じます。私たちのふるさとをみんなでいっしょに築いていきたいです」

 

かめのり賞 人材育成部門 特定非営利活動法人国際活動市民中心CINGA

 国際活動市民中心CINGA様は、在留外国人の問題、課題解決のために、弁護士、行政書士、医師、研究者など専門家が構成する組織として2004年に発足した団体です。現在は、少数言語通訳の派遣や外国人対応の窓口担当者へのアドバイス、若者の進学、就職相談などを行っています。

 

代表理事 大久保和夫様

 「外国籍のスタッフがコーディネーターとして活躍してくれるようになり、『日本人が教える』という関係性ではなく、フラットな立場でそれぞれの役割を果たしています。言葉のハンデがある方々が抱える課題を解決していくことは、だれにとっても住みよい社会になるという思いで活動を続けています」

 

かめのり特別賞 特定非営利活動法人あおぞら

 あおぞら様は、医師である葉田理事長が、カンボジアで生後22日の新生児を亡くした母親に出会ったことをきっかけに設立した団体です。すべての命が大切にされ、その人らしく生きることができる社会を目指し、医療を届けています。

 

理事長 葉田甲太様

 「世界では多くの赤ちゃんが亡くなっています。これからも、病院を建てたり、小児科医や助産師に医療技術を教えたりする活動をしていきます。ただ、自分の力だけでは世界は変わらないので、講演活動にも力を入れ、未来を担う若者の行動に期待したいと思っています。命を救って涙を止めたいという一心です」

 

 

 最後に髙野選考委員は、「選考の過程でも、思いを持ったたくさんの活動に触れ、希望を感じた。私自身、大学教員として学生と接するなかで、希望を絶やさぬように伝えていきたいと思わされた」と話しました。

 

 

 

プログラム参加生による体験発表

 

 続いて、2024年度のプログラムに参加した生徒が体験発表を行いました。

 

 

 「かめのりカレッジ2024」の参加生は、リーダーシップやチームワークを学ぶことができたと振り返ります。最終プレゼンテーションでは、内容の急な変更やメンバーの体調不良といった困難を乗り越え、「リーダーに求められるのは突出した才能よりも、相手の言葉を聞き、共感する『オープンマインドの姿勢』だと思った」と話します。「これからも自分のコンフォートゾーンを抜け出し、世界の広さを知りたい」と決意を口にしました。

 

 

 「にほんご人フォーラム2024」の参加生は、海外参加者の日本語の上手さに驚いたそうです。しかし、話を続けるとなぜかかみ合わず、日本語以外の共通点を見つけられないからだと気づいたと言います。そこで、相手の話を待ち、話題を引き出すことに成功。「言語は相手を知るのに有効な手段だが、限界もある。相手を知ろうとする姿勢を忘れないでいたい」と話しました。

 

 

 「第8回カンボジアスタディツアー」参加生は、多様な人と交流し、直接の対話から学びを得たいと考えて応募したと言います。実際にカンボジアで寺子屋や大人の識字クラスを見学し、イメージと現状は大きく異なったそうです。「経済や教育など様々な格差を感じたが、それぞれが独立したものではなく、関連性があると気付いた。だからこそ、一人ひとりが自分の興味のある分野から貢献できると思う」と話しました。

 

 

 「かめのり未来をつくるリーダーシッププロジェクト」参加生は、チームメンバー同士が母国語ではない言語で議論するのが難しかったと話します。しかし、図やキーワードを模造紙に書き出し、「4人で1つの頭脳を共有するような感覚」になれたと振り返ります。「自らの特性を受け入れ、自分にないものではなく、あるものに目を向けることが大事。それにより、オリジナルなリーダーになれる」と話しました。

 


ゲストスピーチ 「若者がつくるこれからの多文化共生」

 

 

 ゲストスピーチでは、一般財団法人ダイバーシティ研究所 代表理事 田村太郎様にご登壇いただきました。「若者がつくるこれからの多文化共生」として、ご自身の経験を踏まえたお話をうかがいました。詳しくはこちらの記事をご覧ください。

 

 

第2部 懇親会

奨学生・プログラム参加者自己紹介、過去のかめのり賞受賞団体紹介、かめのり財団事業紹介

 

 第2部の懇親会では、弊財団創設者で評議員の康本健守がご挨拶し、公益財団法人国際文化フォーラム 理事長 佐藤郡衛様に乾杯のご発声をいただきました

 

 

 佐藤様は、第1部のかめのり賞表彰式を振り返り、「当事者の立場から様々な課題の解決を行う取り組みが素晴らしいと感じた」と話し、「これから民間団体の動きがますます大事になっていく」と期待を口にされました。また「希望は持つものではなく、作るものだという考えのもと、同じ方向を目指す皆さんで手を携えて共に行動していきたい」と、会場の皆さんに呼びかけました。

 

 

 プログラム参加生紹介の時間には、「第8回カンボジアスタディツアー」参加高校生、青少年プログラム参加者、大学院留学アジア奨学生および奨学生OBOGが登壇し、自己紹介や今後への意気込みを話しました。また、過去のかめのり賞を受賞した3つの団体が登壇し、受賞後の活動についてご紹介くださりました。

 

 最後に、弊財団常務理事の西田浩子よりご挨拶し、フォーラムへのご来場を感謝するとともに、日本の喫緊の課題である多文化共生に尽力していくため、変わらぬご支援をお願い申し上げました。