【報告】中等教育日本語教育リーダー教師育成プロジェクト 2年間のプロジェクトが完了
2024.06.20
(独)国際交流基金バンコク日本文化センターとかめのり財団の共催で、タイでの「中等教育日本語教育リーダー教師育成プロジェクト-コンピテンシーの育成を目指した授業の実践と共有-」を2カ年度にわたり実施し、全プロジェクトが2024年3月に完了しました。現地の日本語専門家による、2年目の活動内容と2年間を総括するレポートをお届けします。
報告:国際交流基金バンコク日本文化センター
日本語専門家 近藤 麻衣子
この度、2024年3月に参加教師14名全員が無事に2年間の全てのプロジェクトを修了し、「育成フェーズ」を終えることができました。このプロジェクトは、国際交流基金バンコク日本文化センター(以下、JFBKK)としても14名の参加者と共に試行錯誤を重ねた学び多き機会でした。
2年の支援の中で参加教師から特に好評だったのは、1年目から実施してきたProfessional Learning Community(以下、PLC)と、個別相談の機会を設けるために2年目に導入したチュートリアルでした。PLCは同じ目標に向かって取り組んでいる仲間とアイディアや意見を交換する場として活用されました。また、個別相談はJFBKK講師に授業の組み立て方や活動アイディアを相談することで、そのアイディアが整理・具体化でき、積極的に活用してくれた参加者もいました。どちらもオンラインでの実施ではありましたが、これらを通して参加者の主体的な学びの促進と、個別支援をすることができたように思います。
一方で、1年目同様に2年目も全ての参加教師の授業見学をし、授業後にフィードバックや意見交換を行いました。参加教師一人ひとりがこれまでの学びや経験を授業に落とし込もうと熟考した様子やそれぞれの教育観を理解することもでき、支援をする上で重要なプロセスでした。教師の工夫次第で「生徒の学ぶ姿勢や態度、表情が変わる。」、「生徒が思考し始める。」、「グループで協力するようになる。」、こうした光景が参加教師の授業でも見られました。この学校訪問では参加教師の授業改善という直接的な支援に加え、新しい取り組みには個人の努力だけではなく学校の理解や協力も不可欠であり、教師たちが置かれている環境や課題についても理解することができました。
参加教師はこの2年間、個人での実践と内省と同時に、それらを参加者間で共有することにも取り組んできました。「失敗はチャンス!」と言い始めた参加者がいましたが、このフレーズはプロジェクト全体の合言葉になっていきました。生徒たちのコンピテンシーは一度の授業で育成できるものではありません。そのため、生徒の変化が見えにくく自分のアイディアや工夫が合っているのか、時には苦しく不安になった時もあったようです。こうした不安や悩みを参加者同士で分かち合ったことで、全員が2年間の取り組みを継続することができたのではないかと思います。また、参加者間での支え合いや学び合いを通して、参加教師自身の「コンピテンシー」を伸ばすことにも繋がっていたのではないかと思います。
この2年間での参加教師の変化は目覚ましく、またこうした新たな教育観での日本語教育の必要性を感じ、所属校での小さなPLCを始めている者も出てきています。今後は14名がタイ中等教育の日本語教育をけん引しつつも、この2年間で生まれた教師間の学び合いの場が他の中等教師へも広がり、生徒の「コンピテンシー育成」を意識した取り組みがタイ中等の日本語教育全体に波及していくことを期待し、引き続き「波及段階」としての支援を続けて参ります。
最後に、参加教師14名とJFBKKの挑戦を2年間支えてくださったかめのり財団に厚く御礼申し上げます。
中等教育日本語教育リーダー教師育成プロジェクト 2023年度 概要
支援1:PLC (Professional Learning Community)
時 期:2023年6月~9月の間 頻度:毎月1回 方法:オンライン
目 的:参加者間の定期的な情報、意見交換の機会の提供
支援2: チュートリアル(個別相談)
時 期:2023年6月~9月 方 法:オンライン 頻 度:1回から3回程度、各約1時間
目 的:授業計画をする際の悩みや困っていることを支援者に直接相談する機会提供
支援3:授業見学
時 期:2023年7月~9月(中等学校前期)
頻 度:参加者1名につき、1~2コマ 方法:対面
見学者:本プロジェクト主担当者2名を中心に、サポート講師とも分担
2023 年 ふりかえり会
日 時:2023年10月12日(木)~14日(土)
会 場:タイパンホテル 方 法:対面 参加者:プロジェクト参加者14名
目 的:
(1)2年目前期の実践を多角的に整理・分析することで自らの取り組みを俯瞰的に捉える。
(2)他の参加者との共有およびディスカッション(ピア内省)を通して、「コンピテンシー育成」を意識した実践を改善/修正を続けていける力を養う。
(3)「コンピテンシー育成」を意識した日本語教育をタイ中等教師へ広めていく今後について意見交換をし、今後の計画を検討する。
2 年間の総括会
日 時:2024年3月9日(土)~11 日(月)
会 場:タイパンホテル 方 法:対面 参加者:プロジェクト参加者14 名
目 的:
(1)2年目前期の実践を多角的に整理・分析することで自らの取り組みを俯瞰的に捉える。
(2)他の参加者との共有およびディスカッション(ピア内省)を通して、「コンピテンシー育成」を意識した実践を改善/修正を続けていける力を養う。
(3)「コンピテンシー育成」を意識した日本語教育をタイ中等教師へ広めていく今後について意見交換をし、今後の計画を検討する。