国際交流基金クアラルンプール日本文化センターとの共催で、2024年10月9日~11日にかけて「にほんご人フォーラム 2024(マレーシア)~中等教育日本語教師キャンプ」をクアラルンプールにて実施しました。
現地の日本語専門家による実施報告レポートをお届けします。
報告:国際交流基金クアラルンプール日本文化センター
日本語上級専門家 長田佳奈子
「つながる ~未来に、世界に、人と~」
かめのり財団、マレーシア教育省の協力を得て、2024年10月9日から11日までマレーシア全国の中等教育教師を対象とした日本語教師キャンプをクアラルンプールで行い、54名が参加しました。テーマは「目標と評価を再考する」です。3日間で18時間、皆で議論、発表、質疑、意見交換を繰り返す中で、互いに刺激を受け、有意義な時間を過ごすことができました。
集合写真
まず、日本語カリキュラムは「生徒が日本語の基礎力を身につけ、コミュニケーション能力を高める」ことを目指しているけれど、ふだんの授業を通してコミュニケーション能力は身についているだろうか、そもそもコミュニケーション能力って何?、という問いからスタートしました。そして、成長段階にある生徒が日本語を学ぶ意義は何か、どんな目標を立て、どのように提示するか、教科書の学習項目を活用してどんな活動が考えられるか、評価をどうやるかについて具体的に考えていきました。
話し合い
発表
キャンプの目玉は、最終日の當作靖彦先生(カリフォルニア大学サンディエゴ校名誉教授)による3時間のワークショップでした。當作先生に「日本語学習を通して、他者および自己を発見し、自他の理解を深めながら関係性を築き、協働社会を創ることをめざす態度をどう育成するか」というテーマで依頼したところ、今の世界で成功するために必要な知識、スキル、資質を身につけることを目指した日本語教育のアプローチとしてソーシャル・ネットワーキングアプローチを紹介してくださることになりました。アンケートには、當作先生のメッセージを自身のことに照らし合わせながら考え、受け止め、感動している様子が伝わる記述が多かったです。
「すごく印象に残った言葉がたくさんある。『つながる』『人間を育てる』『3×3+3』。An eye opening workshop。自分の vision / mission はもう一度見直さなければならない。」
「先生の話を聞いて、社会の変化に気づいた。今からどう教えたらいいかを考えると少し心配。しかし、確かに文法と語彙を教えるだけでは不十分だ。生徒のポテンシャルをひきだして、バランスがとれる人間を育てることが一番大事。」
「2017年以来、また當作先生の講義を聞くことができるのをとても楽みしていた。やはり今回もいろいろ考えさせられて、感動した。心の中でいつも理想と現実の戦いがあるけれど、これからもがんばっていきたい。モチベーションをもらった!」
話し合い
當作先生のワークショップ
教育省の担当者から2027年以降の新カリキュラムについての説明もしてもらいましたが、當作先生のワークショップを通じて社会の変化を捉えながら長期的な視点を持つことの重要性についても気づかされました。生徒が世界とつながっていくために、日本語学習において教師はどんな橋渡しができるか、これからも皆で議論していこうという雰囲気の中、キャンプは幕を閉じました。
教育省からの説明
参加教師の作品
最後に、日本語教師キャンプにご協力いただいたかめのり財団に心より感謝申し上げます。
実施概要
にほんご人フォーラム (マレーシア)~中等教育日本語教師キャンプ~
日程:2024年10月9日(水)~10月11日(金)
会場:クアラルンプール(Cititel Mid Valley Hotel 会議室)
参加者:54名