【報告】日ASEANユース・フォーラム Take Actions for Social Change 2023 参加学生からのレポート

2024.03.26

 (公財)かめのり財団と(独)国際交流基金は、ASEAN大学ネットワークと共同で、ASEAN各国と日本の若者間の相互理解を深めるための交流事業「日ASEANユース・フォーラム Take Actions for Social Change 2023」を2023年7月から11月にかけて実施しました。

 

 これは日本ASEAN友好協力50周年を記念する事業で、 ASEAN大学ネットワークに加盟するASEANの30大学と日本の10大学から選ばれた30名の学生が、『2050年に向けて、より良い世界を共に創る』という大きなビジョンの実現に向けて活動を行いました。参加学生は「高齢化社会」、「多様性」、「環境・防災教育」の3つのテーマに分かれ、オンライン研修やASEANでのフィールドトリップ、訪日研修を通して、共に学び、課題解決のためのアクションプランを作成しました。

 

 

 このプログラムに参加した日本人学生の中の3名より届いたレポートを掲載します。

 


 

「高齢化社会」“Senior Squad” チーム 参加学生 S.T.さん

 

 私は「高齢化社会」をテーマに活動をし、8月の海外研修(タイ)や11月の日本視察(広島・東京など)を通して、日本とASEANの「高齢化社会」の現状や課題、解決に向けた取り組みについて学びました。タイでは高齢者が生き生きと生活できるコミュニティーを提供する企業や地域が包括的に高齢者を支援する取り組みなどを学び、日本では仕事を引退した後にさらなる社会参画をするため地域創生を目的にしたNPO法人を立ち上げた高齢者の方々からお話を伺いました。タイと日本での学びから私のグループでは、高齢者に居場所を与えること、仕事を引退してなお社会で役割を持つことに着目し、「世代間交流を目的としたメンターシッププログラム」をアクションプランとして最終発表会を迎えました。

 

 

 ASEANの学生との関わりの中で、私が強く印象に残ったことは、彼らは、自分が行動を起こす、自分が何かを変えるという意識が非常に強いと感じました。私たち日本人学生はよくASEANの学生から「日本人はまじめで忙しい。」という印象を持たれており、確かに彼らと話をする中で、ASEANの学生はもっと悠々自適であると感じました。しかしだからこそ彼らは自分自身の将来や自分の国について考える時間をしっかりと持っており、自分が何をすべきかを理解していると感じます。日本にいると慌ただしく時間だけが過ぎてしまうことが多々ありますが、彼らのように自分自身を見つめる時間を持つことは大切であり、私も見習うべきだと思いました。

 

 

 本プログラムでは自分の大学や日本という枠を飛び出して様々な人と出会いました。文化や価値観、背景の違う人たちと過ごした日々は自分にとって非常に刺激的であり、生涯を通して糧となる経験を得ることができた5か月間です。

 

 

 


 

「多様性」“Chao Mimosa” チーム 参加学生 H.T.さん

 

 私がTASCで参加した Diversity(多様性)チームのメインテーマは、「障がいのある人とどのように協働していくか」でした。多様性チームは8人で、フィリピンへのフィールドトリップから日本の最終プレゼンまで取り組みました。

 

 

 セブ島でのパラドラゴンボート体験では、義足の選手からオールの扱い方を教わり、聴覚障がいがある選手がボートの先頭でリズムをとって一斉に漕ぎ出します。ボートを漕ぐことは綱引きと似ていて、全員の動きをシンクロさせることで大きな力を出すことができました。体験後に東南アジアからの参加者と「選手たちと比べて運動が得意でない自分たち参加者は、チーム内でハンディキャップを抱えており、その意味でdisable(=障害がある)といえるのではないか?」と話しました。この気づきから、我々は最終プレゼンで、「多様性それ自体は、どこにでも存在するのだから、別に問題ではない」というメッセージを伝えたいと考えるようになりました。

 

 

 日本研修では、広島と東京にて、不登校の子供たちのためのNPO、パラリンピックの開会式でパフォーマンスをした団体など様々な社会活動家の元を訪ねました。お話を聞いていると、自身が病気になったり資金繰りに苦労したりと困難なことも多かったです。しかし、簡単に目標を諦めることなく、ご自身の努力と周囲の人の支えにより、社会貢献を実現されていました。

 

 

 障がいというわかりやすい診断の有無にかかわらず、誰しも周囲の人々の支え無しには生きていくことができません。そのことを胸に刻みながら、様々なバックグラウンドの参加者と共に過ごし、頼り頼られながらプレゼンを乗り越えた経験はかけがえのないものでした。

 


 

「環境・防災教育」“Go Green Revolution” チーム 参加学生 M.K.さん

 

 私は環境・防災教育のテーマでこのプログラムに参加しました。インドネシア研修では、火山の噴火をはじめとする災害、ごみ問題を中心とした環境問題について、問題の解決に取り組む現地の方々との対話を中心に学びました。

 

 

 帰国後から訪日研修までの期間には、定期的にオンラインミーティングを行ってアクションプランを練り上げました。初めは英語力や能力の高い他の参加者に驚き押されがちだったのですが、会議に欠かさず参加し、積極的に関わることを意識することにより互いに学び合いながら協働することが出来ました。

 

 

 訪日研修でも同様に沢山の場所を訪れましたが、自国開催だからこそ全く違ったバックグラウンドを持つ人達とともに学ぶことが非常に刺激的で新鮮でした。環境問題も災害も、国によって直面している状況が違うことが興味深かったです。訪問先での話し合いを通して、机上では学べない知見を多く得ることが出来ました。また、日本各地に環境問題の解決や防災のために活動する方々が多くいることも新たに知りました。

 

 

 プログラム全体を通して何よりも学びとなったのは、このプログラムに参加しなければお会いできなかった沢山の人との関わりだったと思います。最終報告会ではプログラムで訪問した施設や団体の方々や、国際社会の最前線でご活躍されている方々とお会いする機会があったほか、参加学生たちの間には深い絆が生まれました。他国の学生と協働するということは、私にとって非常に貴重な経験となりました。これからもこの繋がりを大切にして、交流を継続していきたいです。

 


 

 

実施概要

「日 ASEAN ユース・フォーラム Take Actions for Social Change 2023」

主 催: (独)国際交流基金、(公財)かめのり財団
共 催: ASEAN 大学ネットワーク

 

事業実施スケジュール

2023 年
7 月 22 日(土) オリエンテーション
7 月 30 日(日) オンライン事前研研修
8 月 27 日(日)~ 9 月 1 日(金) ASEAN フィールドトリップ・タイ(高齢化社会グループ)
8 月 29 日(火)~ 9 月 3 日(日) ASEAN フィールドトリップ・フィリピン(多様性グループ)
9 月 3 日(日)~ 9 月 8 日(金) ASEAN フィールドトリップ・インドネシア(環境・防災教育グループ)
10 月 15 日(日)  オンライン中間研修
11 月 19 日(日)~ 11 月 26 日(日) 訪日研修  東京および広島を訪問

 

参加した学生

出身国(五十音順)人数
インドネシア3名
カンボジア3名
シンガポール2名
タイ3名
フィリピン3名
ベトナム3名
マレーシア1名
ミャンマー3名
ラオス3名
日本6名